保険料の納付は義務なの?

突然国民年金の催告状というものが送られてきました。納めなければならないのですか?
国民年金に加入した記憶もなくて……。

国民年金の催告状ですね。
確かに突然催告状が届くと驚いてしまいますし、納付していない期間の長さによってはすぐには納付できない額である場合もありますね。
ですが、国民年金保険料は納付しなければなりません。ほうっておくと『督促状』が届き、その期日内に納付しない場合は延滞金を合わせて納付しなければならなくなったり、財産が差押えされてしまう場合があります。

そうなんですね……。

状況によっては免除申請もできますし、分割での納付にしてもらうことができる場合もあります。ですが、まずは国民年金制度について少し理解を深めてみましょう。
国民年金の基礎知識
プランニングチェック
□ 対象者:第1号被保険者(自営業者、学生、無職等)
□ 保険料納付年齢:20歳~60歳
□ 支給年齢:65歳~終身(繰上げ、繰下げ制度あり)
□ 対象内容:老齢、障害、死亡(遺族)
□ 保険料(支出):月額16,590円(免除制度あり)2022年度
□ 老齢年金(収入):0~年額777,800円
□ 障害年金(収入):777,800円、972,250円(子の加算額あり~)
□ 遺族年金(収入):972,250円(子の加算額あり)
1.強制加入被保険者ーだれがいったい国民年金の加入者なのか?ー

国民年金は、日本国内に住所を有する20歳~60歳までの人全員が加入することとなる社会保険制度(=皆保険制度)です。つまり、外国人でも日本国内に住所があり、20歳~60歳であれば加入義務があるということですね。
この条件に該当し強制的に国民年金に加入している人を『強制加入被保険者』といいます。そして強制加入被保険者には以下の図のように第1号~第3号の被保険者があります。
第1号被保険者 | 第2号、第3号に当てはまらない人 | 自営業者、農林漁業者、無職、学生など |
第2号被保険者 | 厚生年金加入者 | 会社員、公務員など |
第3号被保険者 | 第2号被保険者の被扶養配偶者 | 妻もしくは夫 |
※任意加入被保険者制度とは、60歳までに老齢基礎年金の受給資格期間を満たしてない、将来受給できる老齢基礎年金が満額に達していない、海外に居住している場合などは年齢により申し出ることで任意加入することができます。

厚生年金に加入していても国民年金の加入者なんですか?わたしはずっと会社で厚生年金に加入していました。そういえば、昨年転職をしたとき3カ月ほど社会保険に未加入でしたね。あ、未加入なのではなく、第一号被保険者だったわけか……。

そのとおりです。つまりK村さんは、国民年金の第2号被保険者から1号被保険者になったということになります。じつは退職したときは退職日の翌日から14日以内に『国民年金第1号の資格取得手続き』が必要だったんです。
この手続きをすることにより、迅速に保険料の納付書を発行してもらえますし、失業等による特例免除を受けることができる場合があります。

じゃあ、わたしは第2号被保険者の被扶養配偶者で、第3号被保険者だったということですね。第3号って聞いたことあります。保険料も収める必要がありませんでした。第1号被保険者になったということは、わたしも手続きが必要で、保険料を納める義務があったってことですね。

そのとおりです。では、保険料についてみてみましょう。
2.国民年金保険料ーいつまでにいくら納付すればいい?ー

国民年金保険料は、毎年定額になります。
2022年度(令和4年4月~令和5年3月)は、月額16,590円です。
納付月の翌月末日が期日になるので、それを超えてしまうと未納月としてカウントされてしまいます。
保険料は原則として、本人が負担しますが、世帯主または配偶者が連帯して納付する義務を負います。
■保険料の納付方法
- 納付書
金融機関・コンビニエンスストア・電子納付(Pay-easy)
スマートフォンアプリ(auPAY、d払い、PayPay、PayB)※2023年(令和5年)2月20日~ - 口座振替
- クレジットカード
保険料の免除制度
保険料の免除制度は以下の種類があります。
1.法定免除制度(障害基礎年金等の受給権者、生活保護法の生活扶助受給者等)
2.申請免除(全額免除、4分の3免除、半額免除、4分の1免除)
3.退職等による特例免除
3.学生納付特例制度
4.産前産後の保険料免除
3.国民年金の保険給付

国民年金の給付内容は、なにも『老齢』に限ったものではありません。
『障害』と『遺族』も給付内容となっています。
■老齢基礎年金
老齢基礎年金の受給要件は、65歳であり、かつ受給資格期間が10年あることが必要となります。
老齢基礎年金額は、20歳~60歳まで40年(480月)納付し、満額777,800円(2022年度)となります。
支給内容 | 支給要件 | 年金額 ※2022年度(令和4年度) |
老齢基礎年金 | 65歳で受給資格期間(10年/120月)満たしていること | 満額777,800円 |
480月で満額777,800円になり、上限があるので大変わかりやすいと思います。そのため未納を後から解消したいと希望する方が多いのですが、納付月から2年1ヵ月で時効をむかえると後から納付することはできなくなってしまいます。
■障害基礎年金

国民年金の加入期間に、『初診日』のある病気・けがで障害等級が1級または2級の状態になったとき、以下の保険料納付要件を満たしている場合、障害基礎年金が支給され、子がいる場合は加算も行われます。
保険料納付要件
①初診日の前日において、初診日の属する月の前々月までに被保険者期間があり、その被保険者期間のうち、保険料納付済期間と保険料免除期間を合算した期間が3分の2以上ある。
②ただし、2026年(令和8年)4月1日前は、①の条件を満たさない場合であっても、初診日の前々月までの1年間のうちに、保険料未納期間がない場合、保険料納付要件をみたしたものとされます。
障害基礎年金の保険料納付要件は、20歳になったばかりなどの学生や厚生年金に加入していない働き方をしている人は納付要件を確認しておくほうがよいでしょう。
例えば学生納付特例の免除申請は毎年しなければなりませんが、申請を怠りかつ保険料を納付していない場合、事故などが原因で障害等級に該当しても障害年金を受給できないこととなります。
また事故に遭い病院で治療をしたあとに、慌てて保険料を2年間さかのぼって納付したとしても『初診日の前日』における納付状況を基準とするため、障害等級に該当しても障害年金を受給できないことになります。
障害等級に該当し一生涯受け取ることとなったかもしれない年金を、保険料を納付しないことで受け取ることができない場合があるということは理解しておく必要があり、納付が厳しい場合は免除申請や年金事務所へご相談することをおすすめします。
障害基礎年金の年金額
支給内容 | 支給要件 | 障害等級 | 年金額 |
障害基礎年金 | 国民年金の加入期間に、初診日のある病気・けがで障害等級が1級または2級に該当し、保険料納付要件を満たしていること | 障害等級1級 | 972,250円 |
障害等級2級 | 777,800円 | ||
子の加算額 | 生計を維持されている18歳到達年度の末日までの間にある子または20歳未満であって障害等級1級または2級に該当する障害状態にある子 | 1人目・2人目 | 各223,800円 |
3人目以降 | 各74,600円 |
■遺族基礎年金

国民年金の被保険者がなくなった場合に支給される給付として遺族基礎年金、寡婦年金、死亡一時金があります。ここでは遺族基礎年金のお話をします。
遺族基礎年金の給付を受けるためには以下の要件を満たす必要があります。
1.被保険者(死亡した人)の要件
2.保険料納付要件
3.遺族の要件
被保険者(死亡した人の要件)
①国民年金の被保険者が死亡したとき
②被保険者であった人で、国内に住所を有する60歳以上65歳未満の者が死亡したとき
③老齢基礎年金の受給権者(25年以上)が死亡したとき
④老齢基礎年金の受給資格期間(25年以上)を満たしたものが死亡したとき
保険料納付要件
保険料納付要件が問われるのは、被保険者の要件①と②に該当する人のみで、障害基礎年金の『初診日』を『死亡日』と読み替えます。
①死亡日の前日において、死亡日の属する月の前々月までに被保険者期間があり、その被保険者期間のうち、保険料納付済期間と保険料免除期間を合算した期間が3分の2以上ある。
②ただし、2026年(令和8年)4月1日前は、①の条件を満たさない場合であっても、死亡日の前々月までの1年間のうちに、保険料未納期間がない場合、保険料納付要件をみたしたものとされます。
遺族の要件
①子のある配偶者(②の子と生計を同じにする配偶者に限る)
②子(18歳に達する日以降の最初の3月31日までの間にあるか、20歳未満で障害等級1、2級に該当する障害の状態にある子で、かつ現に婚姻していないこと)
受給権者 | 基本支給額 | 加算額 | |
①子のある配偶者 | 777,800円 | 223,800円 (1.2人目) | 74,600円(3人目) |
②子(要件は障害基礎年金と同様) | 777,800円(一人目) | 223,800円(2人目) | 74,600円(3人目) |